ブレードランナーは良い

映画の中ではブレードランナーが一番好きだったりする。次に好きなのがソナチネで後はぱっと思い浮かんだのがマッドマックスか。

とにかくブレードランナーという映画はマジで素晴らしくて人類の宝なので見たこと無い人は見たほうが良いです。以下ネタバレするのでブレードランナーを見てなかったら読まないほうが良いです。

 

ブレードランナーを最初に見たのは確か大学3,4年の冬ぐらいだった気がする。当時の私は、大学の勉強は面白くないし、将来どうするかよくわからんしで、かなり参ってて映画ばかり見てた。大学の近くに、よく古い映画とか上映してる映画館があってしょっちゅうそこに行っていた。後は中央図書館が映画貸し出しててそこで見たりしてた。ある時その映画館でブレードランナーの上映企画があって、ブレードランナーブレードランナー2049を連続で上映するみたいな企画だった。私はブレードランナー2049を見たくて、ついでにブレードランナーも見るか、みたいな気分でブレードランナーを見たのだった。古い映画だし、ネットで難しくてあんまり面白くないみたいな意見も見たからね。初代ブレードランナーについては全然期待してないのだった。

 

初代ブレードランナーを見て本当に驚いた。人間とは何か、生きるとはどういうことか、という哲学的な視点、雨とネオンの光が降り注ぐ、サイバーパンクな街のあまりの美しさ、暗くてジメジメしていて退廃的な雰囲気。すべてが素晴らしくパーフェクトだった。

 

何よりも私が気に入ったのは、映画の終盤、ハリソン・フォードが人造人間のボスのルドガーバウアーに追い詰められて、ビルの屋上から落ちそうになったシーンだ。私はもちろん落ちないだろうと思っていた。でも、ここから助かるイメージが全く沸かなかった。ハリソン・フォードは人造人間の連中を皆殺しにしてきて、ルドガーバウアーとしては仇であるわけだ。ここからどうやって助かるのだろうか、と思っていると、ルドガーバウアーがハリソン・フォードを力強く引き上げるわけである。私としてはメチャクチャ困惑した。ハリソン・フォードが困惑したのと同じくらい困惑した。引き上げたルドガーバウアーはゆっくりとハリソン・フォードを見ながら、かの有名なモノローグを呟き、そしてゆっくりと目をつむって人造人間の寿命で死ぬ。

 

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I've seen things you people wouldn't believe. Attack ships on fire off the shoulder of Orion. I watched C-beams glitter in the dark near the Tannhäuser Gate. All those moments will be lost in time, like tears in rain. Time to die.

 

このモノローグには本当に打ちのめされた。生まれて始めて英文を丸暗記したほどである。とくに最後の詩的表現が良すぎる。All those moments will be lost in time, like tears in rain. 雨の中で絞り出すようにゆっくりと呟かれるその言葉は言葉の力強さを初めて理解したような気分になった。

 

今思い返すとここでルドガーバウアーがハリソン・フォードを助けたのはいろいろなコンテキストが想定されるわけである。例えば、ルドガーバウアーは直前に人造人間の研究者に合っているから、「実はハリソン・フォードが人造人間で、本人は知らない」ということを知っており、だから仲間のハリソン・フォードを助けた、というコンテキストもあり得るわけである。ただ、私はそうではないと思いたい。ルドガーバウアーは今まで人造人間として生きてきて、強制労働や戦闘に巻き込まれて非人間的な地獄を見てきた。それでも、生きていたいと思うくらい素晴らしい光景を見てきて、自分の生を肯定している、そのことを仇であっても死ぬ直前に人間にわかってもらいたかった。そういうコンテキストのほうが美しいのではないかと考えている。

 

とにかく、この映画と最後のモノローグには打ちのめされてエンディングが終わったあともしばらく呆然とするほどであった。それくらい素晴らしかった。

あまりにも初代ブレードランナーが良すぎたせいで当初の目的だったブレードランナー2049はCGが現代的なこと以外はとにかくチープにしか感じられず、何の思想も感じられず、面白くない映画にしか感じられないほどだった。単体で見ていれば面白かったかもしれないけど。

もうこの映画が好きになりすぎてサイバーパンク2077とかいうゲームが発売されたときは有給とって遊んだくらいだ。残念ながらそのゲームには期待を裏切られたけど。

 

そんなわけで、ブレードランナーは私にとってどんな映画よりも好きな映画になったわけである。